2026.03.11
旅マエ・旅ナカ・旅アトとは?地方創生を加速させるインバウンドマーケティング術
インバウンド需要が拡大するなか、観光施策の現場では以下のようなお悩みをよく耳にします。
- SNSで発信しているが、実際の集客に結びついていない
- 訪日客がどこで情報を得て、何を求めているのかわからない
- 一度訪れた人がリピーターにならず、一見さんで終わってしまう
これらの課題を解決する結論は、旅マエ・旅ナカ・旅アトを一つの線でつなぐ戦略にあります。理由は、現代の旅行者はスマートフォンを使い、旅の準備から帰国後まで絶えず情報と接しているからです。各フェーズを個別に考えず、一気通貫のマーケティングを行うことが、地方創生を加速させる近道となります。
初心者の方にもわかりやすく、具体的な施策や連携のコツを解説しましょう。この記事を読むことで、明日から取り組むべきアクションが明確になります。
■この記事でわかること
- 旅マエ・旅ナカ・旅アトの定義と重要性
- 企業や自治体が取り組むべきフェーズ別の具体策
- 各フェーズを連携させて地域経済を活性化させる方法
この記事の要約はこちらをクリックしてください
「旅マエ・旅ナカ・旅アト」のインバウンド集客は独立した施策ではなく、一つの循環したサイクルとして捉える戦略にあります。旅行者のスマートフォン利用が前提となった現代では、各フェーズを「線」でつなぐデジタル施策が不可欠です。旅マエでのSNSによる認知、旅ナカでのストレスフリーな体験、旅アトのSNS・越境ECによるファン化を連動させることで、一見さんを地域のファンへ進化させることができます。企業と自治体が共有し、一気通貫のマーケティングを実践することが、地域消費を最大化し持続可能な地方創生を実現することができます。
目次
訪日観光客の心をつかむ「旅マエ・旅ナカ・旅アト」とは?
インバウンドマーケティングの成功には、顧客の行動を時系列で捉える視点が欠かせません。それが「旅マエ」「旅ナカ」「旅アト」の3ステップです。

3つのフェーズの定義とインバウンドにおける重要性
観光庁の調査からも明らかなように、訪日客の行動はインターネットの普及によって劇的に変化しました。かつてのような「団体旅行で決められた場所を回る」スタイルから、個人が自ら情報を取捨選択する「FIT(個人旅行)」が主流となっています。
旅マエ(出発前): 旅行に来る前の準備段階、SNSや検索でリサーチを行う。旅行先を検討し、航空券や宿泊施設、体験プログラムを予約する期間。
旅ナカ(旅行中): 実際に日本へ滞在し、移動、食事、観光、買い物を行う期間。
旅アト(帰国後): 自国に戻り、旅の思い出をSNSで共有したり、気に入った商品をオンラインで購入したりする期間。
多くの自治体や企業は、これまで「旅マエの広告」や「旅ナカの接客」を独立した施策として行ってきました。しかし、これでは顧客との接点が途中で途切れてしまいます。インバウンド消費を最大化させるためには、これらのフェーズを連動させることが非常に重要なのです。
なぜ「点」ではなく「線」の施策が必要なのか
現代の旅行者は、たった一つの広告を見て意思決定をすることはありません。SNS、動画、口コミサイト、ブログなど、さまざまな情報を組み合わせて自分だけの旅を作ります。
情報が断絶していると、せっかく旅マエで興味をもった層が、旅ナカでどこへ行けばよいのかわからず、結果として機会損失を招きます。
消費行動の変化の理解
観光庁の「訪日外国人の消費動向調査」によれば、訪日前に役に立った情報源として「SNS」や「動画サイト」が全体の上位に入っています。これは、実際に体験した人の「生の声」が信頼されている証拠でしょう。
引用元:観光庁 訪日外国人の消費動向調査
【旅マエ】訪日前に「選ばれる」ためのデジタルマーケティング
旅マエは、世界中の観光地のなかから、自地域や自社サービスを「候補」に残してもらうための重要な期間です。
SNSと動画による認知拡大と「行きたい」の醸成
視覚的なインパクトが強いInstagramやTikTok、YouTubeは認知獲得に欠かせません。特に短尺動画は、現地の熱量をダイレクトに伝えられるため、強力なきっかけになります。
InstagramやTikTokなどを活用した自治体や自社の魅力を多言語配信
旅マエの外国人に対して、選んでもらうためには自治体や自社の魅力や強みが伝わる配信を行う必要があります。
また、その情報に母国語で辿り着けるかも重要となります。多言語で発信を行うことで多くの外国人に届けることができます。
ターゲットを絞ることで対応する言語を少なくして、そのターゲットに刺さる情報や魅力の配信を行うことも有効な対策になります。
インフルエンサー活用で失敗しないための選定基準
インフルエンサーはSNSにおいて大きな影響力を持ちます。自然と自社のサービスを利用して発信してもらうことができれば費用もかかりませんが、多くの企業ではそのような偶然が生まれることは少ないです。
インフルエンサーによる拡散を行いたい場合、単にフォロワー数が多い人を選ぶのは避けてください。
- ターゲット層とフォロワーの属性が一致しているか
- 投稿の質がブランドイメージを損なわないか
- 過去の投稿に対してファンが熱心に反応しているか
これらを基準に、地域や商品の魅力を自分事として語ってくれるパートナーを慎重に選びましょう。
またインフルエンサーの活用での注意点として、広告であるにもかかわらず、広告であることを隠すことがいわゆる「ステルスマーケティング」に該当します。
広告・宣伝であることがわからず、企業ではない第三者の感想であると誤って認識してしまい、その表示の内容をそのまま受けとってしまい、消費者が自主的かつ合理的に商品・サービスを選ぶことが出来なってしまいます。
「#PR」などの明瞭な広告表示を行い、誤認されないような工夫が必要です。
OTA(オンライン旅行代理店)と公式サイトの最適化(SEO/MEO)
SNSで興味をもったユーザーは、次に具体的な予約方法や詳細を調べます。このとき、検索結果に適切な情報が出てこなければ、熱はすぐに冷めてしまいます。
多言語対応と予約導線のスムーズな設計
「予約が難しい」と感じた瞬間に、ユーザーは競合他社へ流れます。
- 英語、中国語(簡体字・繁体字)、韓国語なご多言語対応
- Apple PayやGoogle Payを含む多角的な決済手段
- スマートフォンからストレスなく操作できる画面設計
これらは最低限整えておきたいインフラといえるでしょう。
【旅ナカ】満足度を高め、地域消費を最大化させるリアルな顧客体験
現地に到着した観光客に対し、いかに滞在を楽しんでもらい、消費を促すかが腕の見せ所です。
ストレスフリーな環境整備(Wi-Fi、キャッシュレス、多言語)
旅ナカの不満として常に上位に挙がるのが、通信や決済の不便さです。
- 街中や施設内での無料Wi-Fi提供
- QRコード決済やタッチ決済の全面導入
- 翻訳機や多言語メニューによるコミュニケーション支援
これらが整っていることで、観光客は安心して行動でき、結果として消費額の向上につながります。
Googleマップなどの地図アプリによる実店舗・スポットへの誘導
旅行者の9割以上が、現地での移動や店探しに地図アプリを利用しているという調査もあります。
スマートフォンを起点とした「ついで買い」を促す仕掛け
MEO(マップ検索最適化)を徹底しましょう。
- 正確な営業時間と魅力的な写真の掲載
- 多言語での口コミに対する丁寧な返信
- 「現在地からの近さ」を活かしたプッシュ型の情報発信
これにより、予定になかった店舗への立ち寄りや、周辺スポットの周遊を促すことが期待できるでしょう。
投稿の誘導とUGC(ユーザー生成コンテンツ)の威力
UGCとは、一般の旅行者が投稿した写真や動画のことです。これは通常の企業のアカウントの発信と比較して以下のような違いがあります。
- 共感を通じて拡散されやすい
- 情報の信頼性が高い
- 広告費がかからない
旅行者にSNSへの投稿を行なってもらうために、「フォトスポットの整備」や「ハッシュタグキャンペーン」などの仕掛けも効果的です。
そうすることで旅行者が行なったSNSの投稿を見て、「行きたい」と感じる次の旅行者が生まれる可能性があります。
地域の魅力を深く知る「体験型プログラム(コト消費)」の充実
単に景色を見るだけでなく、その土地の文化に触れる体験が強く求められています。
自治体と民間企業が連携した滞在時間の延長施策
例えば、伝統工芸の製作体験や、農家での収穫体験などです。
これらは滞在時間を延ばすだけでなく、地域住民との交流を生み、深い愛着を育む効果があります。
「そこでしか味わえない時間」を提供できるようなサービスや企画を検討してみましょう。
【旅アト】帰国後も続く関係性とリピーター獲得の仕組み
旅が終わったあとも、顧客とのつながりをもち続ける仕組みが地方創生・リピーター獲得の鍵を握ります。
越境ECを活用したお土産の継続購入とファン化(CRM戦略)
「あのとき食べた味が忘れられない」というニーズを、帰国後も逃してはいけません。
- 海外配送に対応した越境ECサイト(ネットショップサイト)の構築
- 季節に合わせた限定商品のSNS・メールマガジン配信
- 会員限定の先行販売や特別割引の提供
これにより、一度きりの消費を中長期的な利益に変えることが可能になります。
SNSフォローを通じた最新情報の提供と再訪意欲の喚起
滞在中にSNSをフォローしてもらうための「声かけ」や「特典」を忘れないでください。
帰国後の日常のなかで、ふと現地の美しい風景や新しいアクティビティの情報を目にすることで、「またあの場所に行きたい」という気持ちを維持させることができます。
また、旅行時の写真や感想をSNSに投稿してもらい、認知度の拡大・更なる旅行者の獲得に繋げていきましょう。
関係人口創出への繋げ方
観光客を「一時的な訪問者」から「地域の応援団(関係人口)」へと進化させましょう。
帰国後のユーザーとデジタル接点を持ち続ける方法として、デジタル会員証や、ポイントプログラムを導入するのも一つの手です。
特定の地域を何度も訪れることで得られる称号や特典を用意し、再訪の心理的なハードルを下げてください。
企業と自治体が取り組むべき「フェーズ連携」の具体策
これまでに挙げた施策を、いかにして「一つのストーリー」としてつなげるかが重要です。
データで顧客像を可視化する
個人を識別しない統計化された顧客データをまとめることで、マーケティングに活かすことができます。
- どのような属性の人が、どの国から来ているか
- どのスポットを巡り、どこで離脱しているか
- 平均して一人あたりいくら使っているか
これらのデータを分析し、エビデンスに基づいた施策を打つことで、勘に頼らないマーケティングが実現します。
個人データとして取得することが想定される場合には、本人同意の確認等を得る必要があります。
事例から学ぶ「一気通貫」のプロモーション設計
具体的な連携の例を以下にまとめました。
| フェーズ | 具体的アクションの例 | 期待できる効果 |
|---|---|---|
| 旅マエ | 積極的なSNSの投稿SNS広告から「限定体験予約ページ」へ直接誘導 | 旅行先のリストに入る事前予約による確実な来客 |
| 旅ナカ | 体験中の写真をハッシュタグ付きで投稿してもらい割引 | リアルタイムの口コミ拡散 |
| 旅アト | 投稿してくれたユーザーに越境ECの特別クーポンを送付 | 帰国後のリピート購入 |
【モデルケース1】地域産品のブランド化に成功した企業の取り組み
ある酒造メーカーは、Instagramで製造工程の動画を英語字幕付きで公開しました。
蔵見学に訪れた外国人に対し、その場でSNSへの投稿を促し、同時に自社の海外発送対応ECサイトを紹介しました。
その結果、帰国後も「あの酒をもう一度飲みたい」というリピート注文が増加し、海外売上が上昇しました。
【モデルケース2】広域連携で観光客の周遊を実現した自治体の事例
隣接する3つの自治体が協力し、デジタル周遊パスを発行しました。
スタンプラリーをスマートフォン上で実施し、全エリアを回った人には、旅アトで地元の特産品が自宅に届く抽選権を付与しました。
これにより、特定の有名スポットに集中しがちだった観光客を地域全体へ分散させ、広域での経済波及効果を生み出しました。
インバウンド施策でよくある質問(FAQ)
予算が限られている場合、どのフェーズから着手すべきですか?
まずは「旅ナカ」の受け入れ態勢を整えることをおすすめします。
なぜなら、いくら旅マエで多額の広告費をかけて集客しても、現地で不便を感じさせてしまうと、ネガティブな口コミが広がってしまうからです。
Googleマップの情報の充実や、多言語メニューの用意など、お金をかけずにも今すぐできることから始めてみましょう。
旅マエの認知から旅ナカの来店までを計測する方法はありますか?
デジタルクーポンや専用のQRコードを活用するのが効果的です。
SNSやWebサイトだけで発行される特定のクーポンを店頭で提示してもらうことで、どのメディアを見て来店したかを正確に追跡できます。
交流も兼ねてアンケートを実施するのもよいでしょう。
こうしたデータは、次年度の予算配分を決める際の貴重な資料となります。
帰国後のリピート率を高めるには何が最も効果的ですか?
滞在中の「感動体験」を最大化させることに加え、SNSを通じた継続的なコミュニケーションが大切です。
一度きりの関係で終わらせないためには、帰国後も「自分にとって特別な場所である」と感じさせ続ける必要があります。
パーソナライズされたメッセージや、再訪者向けの特別な特典を用意するとよいでしょう。
小規模な自治体でもデジタルマーケティングは活用できますか?
はい、もちろん可能です。
むしろ、ターゲットを絞りやすい小規模な自治体こそ、SNSの活用や、場合によっては特定の趣味をもつインフルエンサーを活用したニッチな発信が効果を発揮します。
万人に受ける情報ではなく、その土地にしかない「ありのままの暮らし」や「独自の歴史」を丁寧に発信してください。
まとめ:持続可能な地域創生に向けたインバウンド戦略の第一歩
インバウンドマーケティングにおいて、「旅マエ・旅ナカ・旅アト」を統合して捉えることは、もはや必須の戦略です。
各フェーズで最適な施策を打ち、それらを一本の線でつなぐことで、観光客の満足度は高まり、地域に落ちる経済効果も最大化されます。
最も大切なのは、観光客の目線に立って「次に何が知りたいか」「どんな不便を感じているか」を徹底的に想像することです。
デジタルツールを賢く使いながらも、現地での温かいおもてなしを忘れないことが、地域のファンを増やす一番の近道になるでしょう。
まずは自分たちにできる小さな一歩から始めてみましょう。
それが、10年後、20年後の地域を支える大きな力になるはずです。
