2026.03.25
地方創生2.0とは?1.0との違いと企業・自治体の活用ポイントをわかりやすく解説
「地方創生2.0という言葉をよく耳にするけれど、具体的に何が変わったのだろう」と疑問におもう担当者も多いのではないでしょうか。 現場からは、以下のようなお悩みをよく聞きます。
・地方創生2.0がこれまでの政策とどう違うのかわからない
・自社のビジネスや新規事業にどういかせるのか知りたい
・自治体として、どのような戦略を設計するべきか悩んでいる
結論からいうと、地方創生2.0は人口減少を受け入れ、デジタル活用や関係人口の創出によって「新しい日本・楽しい日本」をつくる新しいフェーズです。 これまでの定住人口の増加を目指すアプローチでは、持続可能な地域経済の維持が困難になったことが理由として挙げられます。
本記事では、地方創生2.0の背景や目指す姿をはじめ、従来との違いをわかりやすくまとめました。 さらに、国が推進する政策の5本柱や、具体的な参入領域も詳しく紹介します。 地域の未来を切り拓くヒントが詰まっていますので、ぜひ参考にしてください。
■この記事でわかること
- 地方創生2.0と1.0の5つの違い
- 国が推進する政策の5本柱
- 企業や自治体がビジネスや政策にいかすポイント
この記事の要約はこちらをクリックしてください
地方創生2.0は、人口減少を前提とし、デジタル技術や関係人口の創出を通じて「自立して稼げる持続可能な地域」を目指す新たな取り組みです。定住人口の増加を目指したこれまでの政策から転換し、多様な人材の循環や広域連携、付加価値の高い産業の創出を重視しています。政府は、生活環境の維持や新技術の徹底活用など5つの柱を推進しています。企業にとっては、DXや観光などの領域で地域課題を解決し、新たな収益基盤を構築する絶好のビジネスチャンスです。一方、自治体は民間企業のノウハウを積極的に取り入れる官民連携を進め、住民の幸福度向上に直結する持続可能な戦略を再設計することが求められています。
目次
地方創生2.0とは何か
地方創生2.0は、これまでの取り組み論理を転換し、新しいフェーズへ移行するための概念です。国が推進する次世代の地域づくりの全体像を把握するために、まずは打ち出された背景と目指す姿について詳しく見ていきましょう。
地方創生2.0が打ち出された背景
2014年に始まった地方創生(いわゆる1.0)では、東京一極集中の是正や地方の人口減少に歯止めをかけることを主眼としていました。「まち・ひと・しごと創生総合戦略」のもと、各自治体が人口目標を掲げて移住促進や企業誘致に取り組んできた歴史があります。
しかし、日本の劇的な人口減少トレンドを完全に止めることは難しく、多くの自治体で定住人口の増加という目標達成が困難な状況となりました。そこで、人口減少をを正面から受け止めながら、いかに持続可能で自走できる地域づくりを行うかという視点が必要になりました。
内閣官房の地方創生に関する公式資料でも示されているとおり、これまでの成果と課題を検証し、デジタル技術の急速な発展などの社会変化を踏まえて打ち出されたのが「地方創生2.0」です。
参照元:内閣官房地域未来戦略本部事務局「地方創生2.0」
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/chihousousei2_0/index.html
地方創生2.0が目指す姿
新しい地方創生では、単なる人口維持ではなく、地域の質的な向上に焦点を当てています。具体的には、「強い経済」「豊かな生活環境」「新しい日本・楽しい日本」の3つの実現を目指しています。
「強い経済」とは何か
地域の資源を最大限に活かし、付加価値の高い産業を創出することです。
これまでは国からの補助金や交付金に依存しがちな側面がありました。
しかし今後は、地域内で資金が循環し、外貨(地域外からの売上)を獲得できる自立した経済基盤をつくる必要があります。地元企業が利益を出し、それが雇用や賃金の上昇につながる好循環を生み出す状態を指します。
「豊かな生活環境」とは何か
住民が将来にわたって安心して暮らし、ウェルビーイング(心身の社会的幸福)を感じられる環境のことです。人口が減っても、医療、教育、交通、買い物などの基礎的な生活インフラを維持しなければなりません。
そのためには、最新のテクノロジーを駆使して、生活の質を落とさずに利便性を高める仕組みづくりが求められます。
「新しい日本・楽しい日本」とは何か
多様な価値観を認め合い、誰もが自由な発想で挑戦でき、その地域で生きる価値を実感できる社会のことです。
都市部の真似をするのではなく、地域独自の歴史、文化、自然などの魅力を磨き上げます。
その結果として、国内外から多様な人材が集まり、イノベーションが生まれるような、活気あふれる魅力的な地域をつくることを意味します。
地方創生2.0と1.0の違いを5つで整理
地方創生2.0の本質を理解するためには、従来のアプローチ(1.0)との違いを明確にすることが重要です。ここでは、5つの決定的な違いを整理して解説します。

人口減少を「止める」から「受け止めて適応する」へ
従来の政策は、あらゆる手段を使って人口減少を食い止めることに注力していました。しかし2.0では、人口が減る現実を冷静に受け入れます。
その上で、地方公共団体間の広域連携や、官民連携を推進を行い、少ない人口規模でも豊かに暮らせる社会システムやインフラへの「適応」を優先する考え方へと大きく転換しています。
若者・女性に選ばれる地域づくりへ
これまでの地方創生は、工場などの大規模な企業誘致や、幅広い層への移住促進が中心でした。
現在は、ターゲットをより明確にし、若者や女性が「ここで働きたい」「暮らしたい」と心から思えるような環境整備が重要視されています。「共働き・共育て」が一般化する中、多様な働き方ができる職場や、子育て支援が充実した地域が生き残る時代となります。
「稼ぐ地方」を高付加価値化と新結合でつくる
過去の取り組みでは、一過性のイベント開催や、採算の取れないハコモノ(公共施設)の建設が目立つケースがありました。今後2.0では、地域資源を磨き上げることに加え、デジタル技術や異業種のノウハウ、施策、人材を掛け合わせる「新結合」が必要です。
それにより、高い利益を持続的に生み出すビジネスモデル(稼ぐ地方)の構築が強く求められています。
関係人口と人材循環で都市と地方をつなぐ
定住者の増加(移住)だけを目標にするのではなく、地域と多様に関わる「関係人口」の創出へ軸足が移っています。
関係人口とは、観光以上・移住未満の関わりをもつ人々のことです。副業やワーケーション、プロボノ活動を通じて、都市部の優秀な人材が地方のプロジェクトに参画し、人材が循環する仕組みをつくります。
AI・デジタルと広域連携で面展開を進める
単一の市町村だけで全ての行政サービスや課題解決を完結させるのは限界があります。そのため、隣接する自治体と連携する「広域連携」が不可欠です。
よい事例を一部の自治体だけで終わらせず、広域リージョン連携で横に広げる視点も2.0の特徴です。
AIやデジタル技術を共通基盤として導入し、複数の自治体でデータを共有しながら、効率的な行政サービスや交通網を広域(面)で維持していく手法が取られます。
地方創生2.0の政策の5本柱
政府が推進する地方創生2.0には、具体的な施策の方向性を示す5つの柱が存在します。それぞれどのような内容が含まれているのかを詳しく見ていきましょう。

安心して働き、暮らせる地方の生活環境の創生
人口減少が進む中でも、住民が安心して暮らせる環境を維持するための柱です。国は「地域くらしサービス拠点構想」を掲げ、生活に必要なサービスを1か所に集約する取り組みを進めています。 具体的には以下の施策が推進されています。
・スーパーへの行政窓口の併設
・ドローンを用いた日用品の自動配送
・多様な世代が交流する日本版CCRCの展開
また、民主導による新しいまちづくりや、若者・女性に選ばれるための職場環境の改善も支援の対象です。行政と民間が協力し、持続可能な生活インフラを再構築します。
稼ぐ力を高め、付加価値創出型の新しい地方経済の創生
地域経済の縮小を防ぐため、高い利益を生み出す産業を育て、外貨を稼ぐことを目指す柱です。スタートアップ企業の支援や、産官学が連携するイノベーション拠点の形成が強化されています。 具体的には、以下の取り組みが挙げられます。
・地域の特産品をいかした越境ECの展開
・訪日外国人を呼び込む高単価な観光コンテンツ造成
・AIを搭載したロボット農機によるスマート農業の普及
既存の産業にデジタル技術や新しいアイデアを掛け合わせる「新結合」により、地域企業の稼ぐ力を底上げすることが重要です。
人や企業の地方分散
東京圏への過度な一極集中を是正し、地方へ産官学の拠点や人材を分散させるための柱です。企業の本社機能や研究開発拠点の地方移転を後押しし、地方における良質な雇用を創出します。
・サテライトオフィスの整備とテレワーク普及
・都市部の専門人材による地方での副業推進
・大学や研究機関の地方移転への支援
移住による定住人口の増加だけでなく、都市と地方を行き来する関係人口の拡大も視野に入れています。場所にとらわれない働き方が浸透する中で、地方を新しいビジネスや生活の舞台として選んでもらうための環境づくりが進められています。
新時代のインフラ整備とAI・デジタルなどの新技術の徹底活用
地方創生2.0の根幹を支えるのが、デジタル技術の社会実装です。人手不足や物理的な距離といった地方特有の課題を、AIやデジタル技術で克服することを目指します。
・5G通信網や光ファイバーの全国的な整備
・行政手続きの完全オンライン化とデータ連携
・自動運転バスによる地域交通網の維持
最新技術を単なる実証実験で終わらせず、生活インフラとして徹底的に活用します。これにより、限られた人員でも質の高い行政サービスや民間事業を提供できる体制を整えます。
広域リージョン連携
単一の市町村という枠組みを超え、複数の自治体が連携して経済圏を拡大させるための柱です。人口減少下では、すべての自治体が個別にフルセットの行政サービスを維持するのは難しくなっています。
・複数自治体でのごみ処理施設の共同利用
・広域での観光ルート開発とプロモーション
・医療データの広域連携による救急搬送の効率化
地域資源を掛け合わせることで、スケールメリットを生み出します。広域で連携し、コストを抑えながら相乗効果を最大化するアプローチが求められています。
地方創生2.0をビジネス・政策に活かすポイント
ここまで解説した国の方針を踏まえ、企業と自治体が地方創生2.0をどう具体的に活用すればよいのか、実務に直結するポイントを解説します。
企業が注目したい参入領域
企業にとって地方創生2.0は、自社の技術やノウハウを地方の課題解決にいかし、新たな収益の柱(BtoG事業)を構築する絶好の機会です。
DX・AI・データ活用で地域課題を解く
自治体の深刻な人手不足を解消するため、業務効率化や住民サービスの向上にIT企業の技術が強く求められています。例えば、AIを用いた鳥獣害の予測システムや、地域の購買データを分析して商店街のマーケティングを支援する事業などが挙げられます。システムの納品だけでなく、運用まで伴走するサービスが評価されます。
観光・インバウンドと地域資源の高付加価値化
単なる観光案内ではなく、地域の文化や歴史をビジネス化する視点が必要です。古民家を改修した高級宿泊施設(分散型ホテル)の運営や、地域の伝統工芸品を海外の富裕層向けに販売する越境ECの構築など、観光業とインバウンドを掛け合わせた高単価ビジネスが有望な参入領域となります。
GX・地域産業・スマート農林水産業に広げる
持続可能性(サステナビリティ)をテーマにした事業展開も重要です。脱炭素社会に向けた再生可能エネルギーの地域導入(GX:グリーントランスフォーメーション)や、IoTセンサーを活用して農作物の収穫時期を最適化するスマート農業のシステム開発など、第一次産業のアップデートに関わるビジネスモデルが期待されています。
自治体が押さえたい企画設計の要点
自治体の担当者は、国が示す方針を深く理解した上で、絵に描いた餅にならない実効性のある計画を立てる必要があります。
総合戦略とKPIをどう見直すか
次期「地方版総合戦略」を策定する際は、非現実的な人口増加目標に固執するのをやめる決断が必要です。代わりに、住民の幸福度(ウェルビーイング指標)の向上、年間に関わる関係人口の増加数、地域内での経済循環率など、質や持続性を重視した新しいKPI(重要業績評価指標)を設定しましょう。具体的な数値目標が、施策の説得力を高めます。
官民連携・関係人口・広域連携をどう組み合わせるか
行政の予算と人員だけで全てを解決しようとせず、民間企業の資金とノウハウを積極的に取り入れる官民連携(PPP/PFI)を推進することも必要となってきます。
例えば、廃校となった施設を民間企業に貸し出し、周辺自治体とも連携してサテライトオフィスやワーケーション施設として再生するなど、複数の要素を組み合わせた多角的なアプローチが成功の鍵となります。
よくあるご質問
実務担当者が地方創生2.0を進める上で、よく抱く疑問とその回答をまとめました。
地方創生2.0は地方創生1.0と何が違うのですか?
最大のポイントは、人口減少を「止める」のではなく「適応する」という前提に立っている点です。
定住人口の増加から関係人口の創出へ、そして補助金頼みの事業から自立して稼ぐ地域づくりへと、根本的な考え方が大きく変化しています。
地方創生2.0で企業に求められる役割は何ですか?
行政だけでは解決が難しい複雑な地域課題に対し、デジタル技術や新しいビジネスモデルを提供することです。
単なる社会貢献(CSR)ではなく、企業自身も利益を出しながら地域経済に貢献する、持続可能な事業運営のパートナーとしての役割が求められています。
地方創生2.0で使える補助金や支援策はありますか?
はい、存在します。代表的なものとして「デジタル田園都市国家構想交付金」などがあり、デジタル技術を用いた地方創生事業に対して手厚い財政支援が行われています。
予算枠や公募条件は毎年更新されるため、最新の公募情報は内閣府や関係省庁のホームページを定期的に確認してください。
地方創生2.0では関係人口がなぜ重要なのですか?
定住人口が減少していく中で、地域経済の規模を維持するためには、外部からの継続的な関わりが不可欠だからです。
観光以上、移住未満の「関係人口」が増えることで、地域に新しいビジネスのアイデアや消費、そして専門的なスキルをもった人材の確保、地域の活性化につながっていきます。
地方創生2.0は自治体の総合戦略にどう関係しますか?
各自治体が策定する「地方版総合戦略」の土台となる非常に重要な概念です。
国が示す2.0の理念(デジタル活用、稼ぐ地域、関係人口の創出など)をしっかりと反映し、地域の実情に合わせた次期戦略を見直すための羅針盤としての役割をもちます。
当協議会の繋がりを活かして地域の活性化へ
当協議会には、120以上の企業様・自治体様が参画しています。 定期的に交流会を開催しており、これまで関わる機会の少なかった企業や自治体との新たなつながりをつくることができます。
当協議会というプラットフォームを最大限に活かし、関係人口の創出と「地方創生2.0」の実現をともに目指しましょう。 まずはお気軽にご相談ください。
まとめ
地方創生2.0は、人口減少という厳しい現実を受け入れた上で、デジタル技術や関係人口をフル活用し、自立して稼げる持続可能な地域を目指す新しい取り組みです。
企業にとっては、手付かずの地域課題を解決し、新規事業や官民連携を通じた大きな収益基盤をつくるビジネスチャンスとなります。一方で自治体にとっては、これまでのハコモノや一過性の施策を見直し、真に住民のウェルビーイングが向上する仕組みをつくる重要な転換点です。
本記事で紹介した1.0との5つの違いや、政策の5本柱を参考に、自社の技術力や地域の特性に合わせた具体的なアクションをぜひ検討してみましょう。
