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2026.08.26

インバウンドのキャッシュレス決済対応ガイド!国・地域別の傾向、端末選定、運用方法を解説

訪日外国人旅行者の増加に伴い、店舗や観光施設では、来訪者に合った決済環境の整備が重要になっています。2025年の訪日外客数は4,268万3,600人で、過去最高を更新しました。
出典:日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数(2025年12月推計値)」
https://www.jnto.go.jp/news/press/20260121_monthly.html

  • キャッシュレス非対応による販売機会の損失が気になる
  • 国・地域ごとに、どの決済手段を優先すべきかわからない
  • 店舗や地域に合う決済サービス・端末の選び方を知りたい

結論からいうと、まずは海外発行を含む国際ブランドカードとタッチ決済への対応を確認し、自店・自地域の来訪者構成に応じて海外QRコード決済や電子マネーを追加する方法が現実的です。現金のみの店舗では一部の旅行者に不便が生じ、購入を見送られる可能性がありますが、すべての決済ブランドを一律に導入する必要はありません。

■この記事でわかること

  • インバウンド対応でキャッシュレス決済が必要な理由
  • 国や地域ごとの決済トレンドと主要な決済手段
  • 決済サービス・端末を選ぶ際の確認ポイント
  • 導入から運用までの具体的な5つのステップ
  • 自治体や地域全体でキャッシュレス化を進めるアプローチ

本記事を参考に、販売機会の確保と、地域一体での受入環境整備に役立ててください。

※本記事の制度名、料金、対応ブランドなどは2026年8月25日時点の情報です。契約・申請の際は、各事業者・公的機関の最新情報をご確認ください。

この記事の要約はこちらをクリックしてください

訪日外国人旅行者の増加を背景に、決済環境は受入環境整備の一要素として重要です。観光庁の令和7年度調査では、「クレジット/デビットカードの利用」に困った旅行者は10.7%で、旅行中の困りごとの6番目でした。一方、「困ったことはなかった」とした回答も43.7%あり、課題の大きさは地域や業種によって異なります。国・地域別の傾向は参考になりますが、国際ブランドカードの接触・タッチ決済を土台に、実際の来訪者構成に応じて海外QRコード決済などを追加し、利用可能なブランドを正確に表示することが大切です。地域で進める場合も、共通端末の一律導入ではなく、未対応店舗の把握、運用支援、正確な店舗情報の更新を組み合わせましょう。

インバウンド対応でキャッシュレス決済が必要な理由

訪日外国人旅行者の受入れが拡大するなか、店頭や観光施設における決済環境の整備が求められています。ここでは、キャッシュレス決済を検討する際に押さえたい背景と注意点を解説します。

1-1. 訪日外国人の決済利用実態と日本の受入環境

旅行者が利用する決済手段は、出身国・地域、年齢、保有カード、利用アプリ、旅行目的によって異なります。

国際ブランドカード、モバイルウォレット、QRコード決済、現金を場面に応じて使い分ける旅行者も多いため、「訪日客の大半が現金を持たない」と一括りにするのは適切ではありません。

観光庁の令和7年度「訪日外国人旅行者の受入環境整備に関するアンケート」では、「クレジット/デビットカードの利用」に困った人は10.7%でした。項目別では飲食店で困ったとの回答が最も多く、32%を占めています。また、経済産業省が公表した2025年の国内キャッシュレス決済比率は58.0%でした。

決済は受入環境上の課題の一つですが、地域・店舗ごとの差が大きいため、自店の問い合わせや購入見送りの状況も確認する必要があります。

出典:観光庁「令和7年度 訪日外国人旅行者の受入環境整備に関するアンケート」
https://www.mlit.go.jp/kankocho/news08_00039.html

経済産業省「2025年のキャッシュレス決済比率を算出しました」
https://www.meti.go.jp/press/2025/03/20260331006/20260331006.html

訪日客の利便性を高めるには、幅広く利用される国際ブランドカードへの対応を基本とし、来訪者の構成に応じて海外ウォレットなどを追加すること、さらに現金を含む利用可能な支払方法を事前に明示することが有効です。

1-2. 現金のみの店舗で生じる販売機会の損失と旅行者の不便

現金しか使えない店舗では、手持ちの日本円が不足している旅行者が購入を見送る可能性があります。

決済手段を増やすことは、旅行者の選択肢を広げ、販売機会の損失を抑える可能性があります。一方で、手数料や端末費、通信環境、返金対応などの運用負担もあるため、費用対効果を確認して導入することが重要です。

1-3. 高額決済への対応や会計負担の軽減など事業者側のメリット

キャッシュレス決済は、旅行者の支払いの選択肢を増やすとともに、事業者の現金取扱業務を減らせる可能性があります。

カードやQRコード決済を利用できれば、旅行者は手持ち現金に左右されにくくなります。そのため、高価格帯の商品や体験サービスでは、購入時の心理的・実務的なハードルを下げる効果が期待できます。ただし、客単価が必ず上昇するわけではなく、商品構成や接客、来店客層などにも左右されます。

現金の受け渡し、釣銭準備、締め作業が減ることで、会計や現金管理の負担を軽減できる場合があります。一方、本人認証、通信、端末操作によって処理時間が延びることもあるため、導入後は会計時間やエラー率を測定し、オペレーションを改善しましょう。

1-4. 対応している決済手段を店頭・Webで明示する重要性

決済手段を導入しても、利用できることが旅行者に伝わらなければ、利便性は十分に発揮されません。

店頭の入口やレジ付近には、実際に利用できる決済ブランドと支払方法を、各ブランドの表示ルールに従って掲示しましょう。タッチ決済、カード差し込み、店舗提示型QRコード、利用者提示型QRコードなど、操作方法に違いがある場合は簡潔な案内を添えると親切です。

公式WebサイトやSNS、予約ページ、店舗情報サービスなど、掲載可能な媒体にも最新の対応決済を記載します。旅前・来店前の不安を減らす助けになりますが、掲載内容と店頭の実態がずれないよう、更新担当者と確認頻度を決めておくことが重要です。

インバウンド向けキャッシュレス決済の主な種類

インバウンド対応を進めるには、決済手段の種類と、店舗側の契約・運用方式を正しく把握することが重要です。特徴と費用の考え方を解説します。

2-1. クレジットカード・デビットカード|海外発行カードとタッチ決済

国際ブランドのクレジットカード・デビットカードは、幅広い国・地域の旅行者が利用できる基本的な決済手段です。

カードを端末にかざす「タッチ決済(コンタクトレス決済)」にも対応する端末が広がっています。タッチ決済は会計をスムーズにする効果が期待できます。

端末を選ぶ際は、海外発行カード、デビット・プリペイドカード、接触IC、タッチ決済の対応範囲を、加盟店契約と決済ブランドごとに確認してください。

2-2. 海外QRコード決済・モバイル決済

中国本土、韓国、台湾・香港、東南アジアなどでは、QRコード決済やモバイルウォレットが広く利用されている市場があります。日本で受け入れられるかは、契約する決済事業者、対応ウォレット、読み取り方式によって異なります。

海外ウォレットでは、利用者のアプリに自国通貨換算額が表示され、決済ネットワークが為替処理を行う仕組みがあります。

導入方式には、旅行者が店舗のQRコードを読み取る方式と、店舗が旅行者の決済コードを読み取る方式があります。必要機器、対応ブランド、返金方法が異なるため、単に「QR対応」とだけ確認せず、運用方式まで比較しましょう。

2-3. 電子マネー・交通系IC|補完的な決済手段

交通系ICカード(Suica、PASMOなど)や電子マネーは、日本国内の交通・小売で利用できる店舗が多く、訪日客にとっても少額決済の補完手段になり得ます。

ただし、カードの発行・チャージ方法、残高・利用上限、対応店舗、返金方法には条件があります。高額決済や海外からの旅前決済を担うものではないため、国際ブランドカードなどと組み合わせて考えましょう。

カフェ、食べ歩き、土産品などの少額決済が多い店舗では、来店客の利用状況を見ながら導入を検討するとよいでしょう。

2-4. 決済手段ごとの対応範囲・費用・向いている業種を比較

主な決済手段について、優先度、費用、確認事項を整理しました。料金はサービス、プラン、業種、売上規模、決済ブランドなどによって異なります。

決済手段優先度の考え方公開料金例主な確認事項向いている場面
国際ブランドカード(接触・タッチ)幅広い市場。まず確認対面1.98%~3.25%程度の例※海外発行、EMV、タッチ、暗証番号、返金宿泊・飲食・物販・体験
海外QRコード決済・ウォレット来訪市場に応じて追加一律なし。個別見積り対応ウォレット、読み取り方式、精算通貨、返金飲食・物販・観光施設
交通系IC・電子マネー少額決済の補完3.24%前後の例※端末費、上限、取消、通信交通・カフェ・少額物販

※2026年8月25日時点の代表的な公開プラン例です。Airペイは0.99%~3.24%、STORES 決済は1.98%~3.24%、Squareは一定条件の主要カード対面決済で2.5%、それ以外は3.25%~などと案内しています。料金はプラン等で異なり、海外ウォレットは一律ではありません。

Airペイ「決済手数料・入金サイクル等」 https://airregi.jp/payment/
STORES 決済「手数料率・初期費用・決済端末費用」 https://stores.fun/payments/pricing
Square「カード決済・手数料・海外発行カード」 https://squareup.com/jp/ja/payments/card-payments
Alipay+「Frequently Asked Questions」 https://www.alipayplus.com/faq/

国・地域別に検討したいキャッシュレス決済

出身国・地域は決済手段を検討する手掛かりになりますが、同じ市場でも利用者属性や保有カード、対応アプリによって選択は異なります。自店舗やエリアの来訪者データをもとに、優先順位を決めましょう。

3-1. 欧米・豪州|国際ブランドカードとタッチ決済

欧米・豪州からの旅行者への対応では、国際ブランドのクレジットカード・デビットカードが重要です。

まずVisaやMastercardなど幅広く発行される国際ブランドと、接触IC・タッチ決済への対応を確認します。American Express、JCB、Diners Club、Discoverなどは、自店の来訪者構成や客単価に応じて検討しましょう。タッチ決済でも、金額、カード、端末、発行会社の条件によっては暗証番号入力などが必要です。

カードが使えるか、タッチ決済に対応しているかを正確に表示し、操作に迷った場合の案内を用意しておくことが大切です。

3-2. 中国本土|銀聯カードとQRコード決済

中国本土からの来訪者が多い店舗では、国際ブランドカードに加え、銀聯(UnionPay)、Alipay、WeChat Payなどを優先候補として検討します。

銀聯はカード・決済ネットワーク、AlipayとWeChat Payは利用者向けウォレットです。Alipay+のように複数ウォレットをまとめて受け入れる仕組みもありますが、契約先と対応ウォレットを確認する必要があります。

中国本土からの来訪者比率が高い店舗では優先度が上がりますが、すべての店舗に一律で必須というわけではありません。

3-3. 韓国|国際ブランドカードとモバイル決済

韓国ではカードやモバイル決済が広く使われています。訪日旅行中に利用できるかは、カードの国際ブランドや、日本側の越境ウォレット連携に左右されます。

NAVER Payなど一部の韓国系ウォレットは、日本の決済ネットワークとの連携が進んでいます。たとえばPayPayでは、Alipay+に対応した加盟店QRコードを利用する方式などで海外ウォレットを受け入れていますが、加盟店側の追加申込みや、店舗提示型QRコードへの対応が必要な場合があります。

国際ブランドカードを基本とし、韓国からの来訪者が多い店舗は、契約サービスが対応する韓国系ウォレットと利用方式を確認しましょう。

3-4. 台湾・香港|国際ブランドカードとローカルウォレット

台湾・香港は訪日旅行者数の多い重要市場です。国際ブランドカードに加え、来訪者が利用するローカルウォレットも検討対象になります。

台湾のJKO Payや香港のAlipayHKなどは、日本の一部の決済ネットワーク・加盟店で利用できます。ただし、「マルチ決済端末なら必ず一括対応できる」わけではありません。決済事業者、加盟店契約、店舗提示型・利用者提示型といった読み取り方式によって対応範囲が変わります。

主要な国際ブランドカードを土台に、台湾・香港からの来訪者が多い店舗は、対応ウォレットの一覧と利用条件を追加で確認してください。

3-5. 東南アジア|国際ブランドカードと越境QR決済

タイ、シンガポール、マレーシア、インドネシアなど東南アジアでも、カードやQRコード決済の利用が拡大しています。

各国の国内QR規格や越境決済ネットワークの連携は進んでいますが、各国で利用できるウォレットが、そのまま日本のすべての店舗で使えるわけではありません。契約先が対応する国・ウォレット・読み取り方式を確認し、来訪者が多い市場から追加しましょう。

将来の伸びだけで導入を決めるのではなく、現在の来訪者数、問い合わせ、利用実績、導入費・手数料をもとに判断することが重要です。

3-6. 自店・自地域を訪れる旅行者のデータから優先順位を決める

すべての決済手段を一度に導入するのが難しい場合は、優先順位をつけて順番に対応しましょう。

優先順位を決めるには、自店舗や地域にどの市場から旅行者が訪れているかを把握します。自治体・観光協会の観光客動態調査、予約データ、対応言語、免税販売データ、任意アンケートなどを組み合わせましょう。

通常の決済データだけでは、利用者の国籍や店舗間の周遊経路がわからない場合が多いため、取得できる項目と利用目的を事前に確認してください。

導入後は、決済手段別の利用額、件数、エラー、問い合わせを検証し、費用対効果を見ながら段階的に見直します。

インバウンド向け決済サービス・端末の選び方

インバウンド対応の決済サービスや端末を選ぶ際は、対応ブランドだけでなく、契約条件、本人認証、通信、返金、不正利用時の対応まで確認する必要があります。押さえたい5つの基準を解説します。

4-1. 海外発行カードや越境QR決済に対応しているか

最初に確認したいのは、海外で発行されたカードと、来訪者が利用する海外QRコード・ウォレットが加盟店契約の対象になっているかです。

国際ブランドに対応する対面決済サービスでは、同じブランドの海外発行カードを受け付けられる例が一般的です。ただし、デビット・プリペイドカード、銀聯、オンライン決済、タッチ決済などは対応範囲が異なることがあります。Squareは対象ブランドの海外発行カードに対応すると案内し、Airペイも銀聯の海外発行カードの取扱条件を案内しています。

サービス名だけで判断せず、対象ブランド、海外発行カード、接触IC・タッチ決済、暗証番号入力、取消・返金、サポート範囲を契約前に確認してください。

4-2. 初期費用・月額費用・決済手数料・入金サイクル

導入にかかる各種コストと資金繰りへの影響を総合的に評価しましょう。

端末費、設置費、月額費、決済手数料、振込手数料、契約期間、解約費用などを比較します。海外発行カードだから必ず加盟店手数料が高くなるとは限らず、料率は決済ブランド、支払方法、プラン、売上規模などで決まることが一般的です。海外ウォレットも一律の料率ではなく、アクワイアラー等への見積りが必要です。

入金サイクルと資金繰りへの影響に加え、返金時に元の決済手数料が戻るか、チャージバックや振込に別途費用がかかるかも確認しましょう。

4-3. 業種に必要な機能があるか|POS・免税・予約・会計システムとの連携

決済端末単体の機能だけでなく、店舗で使用している既存システムとの連携性も重要です。

飲食業ではPOSレジや注文システム、宿泊業では予約・管理システムとの連携可否を確認します。免税販売手続きとの連携は、対応するPOS・免税システム・決済サービスの組み合わせに限られます。

「一度の操作で処理できる」とは限らないため、二重入力の有無、連携方法、障害時の運用を確認してください。

必要な連携機能、API、データ出力、会計ソフト連携を整理し、デモや試用環境で実際の業務フローを確認しましょう。

4-4. 多言語表示と問い合わせ時のサポート体制

スタッフが操作しやすい画面構成と、障害・操作不明時のサポート体制も重要です。

端末や客側ディスプレイに多言語表示があれば、旅行者が金額や操作を確認しやすくなります。ただし、表示言語や表示される案内は機種・決済方法によって異なるため、実機で確認してください。

ヘルプデスクの対応時間、休日・夜間対応、連絡方法、現場スタッフが利用できる言語、障害情報の掲載場所を確認します。旅行者向けサポートと加盟店向けサポートは別の場合がある点にも注意しましょう。

4-5. 通信障害・返金・取消・不正利用への対応

通信障害、二重決済、返金、不正利用などが起きた場合の手順を事前に確認してください。

SIM内蔵端末は店舗の有線LANやWi-Fiに依存せず利用できる例がありますが、通信・決済事業者側の障害まで防げるわけではありません。代替回線の有無、オフライン決済の対象と期限、障害時の代替手段を確認しましょう。

キャッシュレス決済の導入から運用までの5ステップ

キャッシュレス決済を導入し、現場で安定して運用するための手順を5段階に分けて解説します。

5-1. 来店客の国・地域と現在の決済課題を把握する

まずは自店舗の現状分析からスタートしましょう。

現在来店している、または今後集客したい訪日客の市場を整理します。予約時の居住地、利用言語、免税手続き、任意アンケートなど、適法に取得できる情報を使います。同時に、決済に関する問い合わせ、エラー、会計時間、購入見送りの状況をスタッフからヒアリングしてください。

現状と目標を明確にすると、必要な決済手段、端末、サポート、通信環境の条件を絞り込みやすくなります。

5-2. 対応する決済手段の優先順位・必要機能・予算を決める

分析したデータをもとに、導入候補の決済ブランドと端末要件を具体化します。

  • 優先して対応する国際ブランドと本人認証方式の設定
  • 来訪者構成に応じた海外QRコード決済・ウォレットの選定
  • 初期費用・月額費用・手数料・端末費を含む予算設定

必要要件を整理し、条件に合う決済サービス事業者・アクワイアラーを比較します。

5-3. 決済事業者を比較して申し込み・接続テストを行う

候補となる決済事業者へ見積もりを依頼し、対応ブランド、料金、入金、返金、サポート、契約期間を比較して申し込みます。

必要書類と導入期間は事業者・業種・決済ブランドによって異なります。本人・法人情報、口座情報、事業内容、店舗・取扱商品、許認可に関する資料などが求められる場合があります。公開案内では、審査から利用開始まで数営業日から数週間の例があり、追加審査で長くなる場合もあります。

端末やアプリの設定後は、決済事業者の案内に従って接続と操作を確認します。通常決済だけでなく、取消・返金、レシート、締め処理、通信切断時の動作もテストしましょう。

5-4. スタッフ研修とトラブル対応マニュアルを整備する

新しい決済端末を導入する際は、実際に会計を担当するスタッフ全員へ操作とトラブル対応を共有します。

カードの差し込み・タッチ、暗証番号入力の案内、QRコードの読み取り方式、レシートの渡し方を練習します。多言語の短い案内シートを用意する場合は、端末の実際の操作に合った表現にしてください。

対処マニュアルには、エラー時の取引確認、二重決済を避ける手順、返金・取消、障害情報と問い合わせ先、代替決済の案内を記載し、更新日を明示します。

5-5. 店頭・Webで対応ブランドを告知し、利用状況を検証する

決済環境が整ったら、利用可能な支払方法を正確に案内します。

店頭の見やすい場所にブランド表示を設置し、Webサイト、SNS、予約ページなどの店舗情報も更新します。運用開始後は、決済ブランド別の件数・金額に加え、エラー、返金、問い合わせ、会計時間を確認してください。

実績と来訪者構成の変化をもとに、決済手段の追加・整理、スタッフ研修、表示、通信環境を継続的に改善します。

自治体・DMO・商店街が地域一体でキャッシュレス化を進める方法

個々の店舗に加え、地域全体で決済情報と支援体制を整えることは、旅行者の不安軽減や受入環境の底上げにつながります。ただし、キャッシュレス化だけで周遊や消費額が必ず増えるわけではありません。地域の課題に合わせた進め方を解説します。

6-1. 地域内の未対応店舗と旅行者の決済ニーズを調査する

地域で進める場合は、最初に導入状況と課題を把握します。

商店街、飲食店、宿泊施設、体験施設などを対象に、対応ブランド、端末、通信、手数料、スタッフ教育、返金対応の状況を調査します。同時に、旅行者アンケートや案内所への問い合わせから、どの場所・決済方法で不便が生じているかを確認しましょう。

店舗側と旅行者側のデータを分けて示すと、支援の優先順位と対象を決めやすくなります。

6-2. 小規模事業者向けの説明会・導入支援・運用相談を行う

小規模事業者では、手数料、端末費、通信環境、会計・経理との連携、スタッフ教育、セキュリティ、障害時の対応などが導入の負担になる場合があります。

自治体やDMO(観光地域づくり法人)、商店街などが、複数サービスを比較できる説明会、実機体験、個別相談を提供すると、事業者が判断しやすくなります。

特定サービスの導入を一律に求めるのではなく、料金、契約条件、データの取扱い、中途解約、サポートを公平に比較できる情報を用意しましょう。

導入後も、操作、返金、通信障害、ブランド追加、表示更新を相談できる窓口を設けると、運用上のつまずきを減らせます。

6-3. 共通ステッカーや決済マップで「使える場所」を分かりやすくする

地域で表示方法をそろえると、旅行者が利用可能な店舗を探しやすくなります。ただし、表示は実際の対応状況と一致していることが前提です。

参加店舗に共通デザインの案内を配布する場合も、各店で利用できるブランド・方式を個別に明記してください。Webマップやパンフレットには、店舗名、決済手段、最終確認日を掲載し、閉店・契約変更を反映する運用を決めましょう。

「使える場所が正確にわかる」ことを地域の価値として打ち出し、誇張のない情報発信を続けることが重要です。

6-4. 取得可能な集計データを地域内周遊・消費分析に活用する

地域でキャッシュレス決済を導入しても、国籍や周遊パターンが自動的に取得できるわけではありません。一般的な決済データで把握できるのは、店舗、日時、金額、決済手段など、契約サービスが提供する項目が中心です。

取得できる範囲の集計データを、営業時間、商品構成、イベント時期、情報発信の改善に活かします。データと現場の声と組み合わせて判断することが大切です。

6-5. 国・自治体の補助金や支援制度を確認する

公的支援を利用する場合は、制度名、対象経費、申請時期、交付決定前の契約・購入可否などを最新の公募要領で確認します。

2026年は「デジタル化・AI導入補助金2026」(旧:IT導入補助金)が実施されています。インボイス対応類型では、対象ソフトウェアと併せて利用するPOSレジ、モバイルPOSレジなどのハードウェアが対象になり得ますが、ハードウェアだけの申請はできません。また、観光庁は、小売・飲食店を含む地域のキャッシュレス決済対応や、地方公共団体・民間事業者の連携を面的な取組として推進しています。

対象事業・公募期間は年度や制度ごとに異なるため、最新情報の確認を行うことが重要です。

申請前に、対象者、登録ITツール、補助対象経費、交付決定前着手の可否、実績報告を確認し、必要に応じて商工会議所、金融機関、行政書士などの相談窓口を案内しましょう。

インバウンドのキャッシュレス対応に関するよくある質問

インバウンド対応のキャッシュレス化に関して、事業者や自治体から寄せられる代表的な質問とその回答をまとめました。

Q1. 最低限どのキャッシュレス決済に対応すればよいですか?

すべての店舗に共通する「最低限の組み合わせ」はありません。

しかし、VisaおよびMastercardの国際ブランドカード(タッチ決済対応)と、中国で主流のAlipay・WeChat Payの2大QRコード決済を導入すると効果的な運用が期待できます。

この組み合わせを用意すると、多くの訪日外国人旅行者の決済ニーズをカバーすることができます。その後、来訪者の動向に合わせてJCBやAmerican Express、韓国・台湾のローカル決済を追加していく方法が効果的です。

Q2. 海外向け決済は通常のカード決済より手数料が高くなりますか?

海外発行カードだからという理由だけで、加盟店手数料が一律に0.5~1%高くなるわけではありません。

加盟店手数料は、決済ブランド、カード・QRコードなどの支払方法、サービスのプラン、売上規模、業種などで異なります。利用者側に発生する為替換算手数料と、店舗側の加盟店手数料は別の費用です。

海外ウォレットについても料金は一律ではないため、ブランド別の料率、税区分、返金時の扱いを見積書で確認してください。

Q3. 地方の個人商店や小規模店舗でも導入できますか?

スマートフォンやタブレットとカードリーダーを組み合わせるサービスや、NFC対応スマートフォンだけでタッチ決済を受け付けるサービスを使えば、専用端末への初期投資を抑えられる場合があります。

ただし、加盟店審査、対応端末・OS、通信環境、本人認証、レシート、返金、スタッフ研修は必要です。利用開始までの期間は、最短当日と案内するサービスから、数営業日・数週間を要するサービスまで幅があります。自店の業務に合うか、試用やデモで確認しましょう。

まとめ|地域全体で「使える・分かる・困らない」決済環境を整えよう

訪日外国人旅行者の支払い時の不便を減らし、販売機会を確保するには、自店・自地域の来訪者構成に合った決済環境を整えることが重要です。

幅広い市場で利用される国際ブランドカードとタッチ決済を基本に、必要に応じて銀聯、海外QRコード決済、交通系ICなどの追加を検討していきましょう。

「使える・分かる・困らない」決済環境を目指し、現状把握、優先順位付け、事業者比較、研修、検証の順で、無理のない範囲から改善していきましょう。

著者情報

私たちは、企業会員74社・自治体会員54団体(2026年6月時点)が参画する、地域創生とインバウンド振興のためのプラットフォームを運営する、一般社団法人地域創生インバウンド協議会の事務局です。

定期的な研究会や交流会などの運営を通じて、官民の枠を超えた「知見の共有」と「ビジネス共創」の場を提供しています。本コラムでは、地域創生・インバウンドに関する情報を中心に、地域の未来を創るための有益な情報を発信していきます。

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