一般社団法人地域創生インバウンド協議会 一般社団法人
地域創生インバウンド協議会

会員ページ

2026.04.30

オーバーツーリズム対策の具体的な対策手法10選!事例も合わせて解説

観光地の賑わいが戻る一方、特定のエリアへの集中やマナー違反に頭を悩ませていないでしょうか。

  • 地域住民からの苦情が相次いでいる
  • 現場の従業員が疲弊し、離職が不安だ
  • 観光地の景観やブランドを守りたい

こうした悩みを抱える担当者の方は少なくありません。

結論からいうと、オーバーツーリズム対策の鍵は「排除」ではなく「事前の抑制と分散」です。住民の生活環境を維持しつつ、観光の質を高めることで、持続可能な地域づくりができるからです。現在は国も対策パッケージを決定し、補助金を含めた支援を強化しています。

本記事では、観光庁の指針や補助金の活用方法、さらに具体的な10の対策手法を事例とともに詳しく解説します。現場ですぐに実践できるノウハウをまとめたので、ぜひ活用してください。官民が連携して、魅力ある観光地を次世代へ繋ぎましょう。

■この記事でわかること

  • オーバーツーリズム対策が急務となっている理由
  • 観光庁の対策パッケージと補助金の概要
  • 混雑緩和やマナー向上に効く10の具体策
  • 国内自治体における最新の事例
この記事の要約はこちらをクリックしてください

オーバーツーリズム対策は、地域住民の生活を守り、観光地のブランド価値を維持するために不可欠です。対策の鍵は排除ではなく「事前の抑制と分散」にあります。観光庁の対策パッケージや補助金を活用しながら、ダイナミックプライシングや混雑の可視化、マナー啓発、高付加価値化といった10の具体的な手法を組み合わせることが重要です。京都市や鎌倉市などの先行事例が示す通り、データに基づき地域が一体となって取り組むことで、観光客と住民が共生できる持続可能な観光地づくりが実現します。官民連携のプラットフォームを活用し、地域の未来を見据えた実効性のある対策を講じましょう。

オーバーツーリズム対策が今、全国の観光地で急務となっている理由

近年、日本全国の観光地でオーバーツーリズム(観光公害)が深刻な社会問題となっています。なぜ今、これほどまでに対策が急がれているのでしょうか。その背景には、単なる「混雑」という言葉では片付けられない、地域社会や経済に対する深刻な影響が隠されています。ここでは、対策が急務となっている3つの大きな理由について詳しく解説します。

オーバーツーリズム対策が今、全国の観光地で急務となっている理由

地域住民の生活環境の悪化と評判の低下

最も深刻な課題は、地域住民の日常生活が脅かされていることです。観光客の急増により、通勤や通学で利用する路線バスが満員で乗れない、といった事態が頻発しています。また、早朝や深夜の騒音、ゴミのポイ捨て、私有地への無断立ち入りなど、マナー違反によるトラブルも後を絶ちません。

このような状況が続くと、住民の観光客に対する不満が蓄積し、「観光客はもう来ないでほしい」という反発を招くおそれがあります。地域社会との信頼関係が崩れれば、観光地としての評判(レピュテーション)は大きく低下し、結果的に観光産業そのものが立ち行かなくなってしまいます。

従業員の疲弊と深刻な人材不足

観光現場で働く従業員の負担増加も見過ごせません。宿泊施設や観光施設では、多言語でのクレーム対応や、マナー違反客への注意喚起など、本来のサービス以外の業務に追われることが増えています。

終わりの見えない対応と激務によって、スタッフがバーンアウト(燃え尽き症候群)に陥り、離職してしまうケースが増加しています。少子高齢化でただでさえ人材確保が難しい中、過酷な労働環境が知れ渡れば、新たな人材を採用することも困難になります。現場を守るためには、システムによる省力化や業務負担の軽減が不可欠です。

観光地としてのブランド価値低下

観光地本来の魅力が失われる危機も迫っています。キャパシティを超えた人が押し寄せると、ゆっくりと景観を楽しむことができず、旅行者の満足度は大きく低下します。SNSで「混みすぎていて最悪だった」「ゴミだらけだった」といったネガティブな情報が拡散されれば、ブランド価値は一瞬で損なわれます。

一度落ちたブランドイメージを回復させるには、膨大な時間とコストがかかります。だからこそ、問題が深刻化する前に、適切な制限や分散化を行い、観光の質を維持する「未然防止」の取り組みが求められているのです。

観光庁「対策パッケージ」から読み解く国の方針と3つの柱

オーバーツーリズムへの対応は、各自治体や企業が単独で行うには限界があります。そこで国(観光庁)は、2023年10月に「オーバーツーリズムの未然防止・抑制に向けた対策パッケージ」を策定しました。

このパッケージは、現場の課題を解決し、持続可能な観光地域づくりを実現するための強力な指針となります。

引用元:観光庁「オーバーツーリズムの未然防止・抑制に向けた対策パッケージ」https://www.mlit.go.jp/kankocho/seisaku_seido/kihonkeikaku/jizoku_kankochi/jizokukano_taisei/overtourism.html

ここでは、国の方針の軸となる「3つの柱」について解説します。

柱1:過度の混雑やマナー違反への直接的な対応

第一の柱は、現在まさに発生している混雑やトラブルに対する即効性のある対応です。交通手段の分散化や、時間帯・時期・場所をずらす取り組みが推奨されています。

具体的には、観光客が集中する路線バスから地下鉄などへ誘導することや、手ぶら観光の推進による車内混雑の緩和が含まれます。また、防犯カメラの設置やスマートゴミ箱の導入支援など、マナー違反を物理的・システム的に抑止するためのハード・ソフト両面での環境整備が進められています。

柱2:地方部への誘客推進による一極集中の是正

第二の柱は、特定の都市部に集中している観光需要を、全国の地方部へ分散させることです。東京や京都、大阪などに偏りがちな訪日外国人旅行者を地方へ呼び込むことで、都市部の混雑を緩和し、地方経済の活性化を同時に図ります。

そのために、地方の自然や歴史文化といったコアバリューを磨き上げ、国立公園でのアドベンチャーツアーの造成や、古民家を活用した高付加価値な宿泊施設の整備などを国が支援しています。

柱3:地域住民と協働した持続可能な観光振興

第三の柱は、地域住民を巻き込んだ計画策定と合意形成です。観光振興は住民の理解と協力なしには成り立ちません。

観光事業者や自治体だけでなく、住民の代表や交通事業者なども含めた協議の場を設けることが重要視されています。地域の課題を共有し、どのような観光地を目指すのかというビジョンをともに描くことで、持続可能なルール作りやマナー啓発が可能になります。

オーバーツーリズム対策を後押しする観光庁の補助金・支援事業

具体的な対策を実施するには、どうしても費用がかかります。「対策の必要性はわかるが、予算がない」と悩む担当者にとって、国の補助金や支援事業は非常に心強い味方です。

オーバーツーリズムの未然防止・抑制をはじめとする観光地の面的受入環境整備促進事業

令和8年度に向けて公募されているこの事業は、観光客の集中による混雑やマナー違反に悩む地域に対し、総合的な受入環境の整備を支援するものです。

引用元:観光庁「令和8年度『オーバーツーリズムの未然防止・抑制をはじめとする観光地の面的受入環境整備促進事業』の公募」
https://www.mlit.go.jp/kankocho/kobo08_00057.html

  • 手ぶら観光の推進設備の導入
  • 多言語対応の案内板やアプリの開発
  • 混雑状況の可視化システムの構築
  • 防犯カメラやスマートゴミ箱の設置

このような多岐にわたる取り組みに対して、国からの補助金が交付されます。自治体だけでなく、要件を満たせば民間企業や協議会も申請可能です。自地域の課題解決に直結するメニューを選び、資金面でのハードルを下げるために積極的に活用していきましょう。

【合わせて読みたい】令和8年度オーバーツーリズム補助金で混雑解消!対象と申請のポイントを徹底解説
https://inbound-council.com/column/878/

【課題別】オーバーツーリズムを防ぐ具体的な対策手法10選

この記事の要約はこちらをクリックしてください

ここからは、実際に現場で活用できる具体的な対策手法を10の項目に分けて解説します。自社や地域の課題に合わせて、最適なものを組み合わせて導入することが成功の秘訣です。

【混雑緩和・分散化】時間・時期・場所の集中を避ける

特定の時間や場所に人が殺到することを防ぐには、経済的なインセンティブやシステムによるコントロールが有効です。

1. 価格変動制(ダイナミックプライシング)の導入

需要に合わせて価格を変動させるダイナミックプライシングは、混雑緩和に大きな効果を発揮します。

  • 休日の料金を高く設定する
  • 平日の料金を安く設定する
  • 早朝や夜間の利用を割引する

このように価格差をつけることで、価格に敏感な層の利用時間を分散させることができます。収益を維持しながら客数をコントロールできるため、経営面でのメリットも大きい手法です。

2. 事前予約制による入場制限と平準化

人気施設や特定のエリアへの入場を完全事前予約制にすることで、キャパシティを超える入場を物理的に防ぎます。

待ち時間によるストレスや周辺道路の渋滞を解消できるだけでなく、事前に来場者数がわかるため、スタッフの配置や在庫管理を最適化できるという利点もあります。

3. 交通手段の分散とパークアンドライドの推進

マイカーでの来訪による大渋滞を防ぐため、パークアンドライドの推進が不可欠です。

  • 郊外の大型駐車場に車を停めさせる
  • そこから公共交通機関で観光地へ向かわせる
  • シャトルバスを運行する

また、交通系ICカードの利用促進や、複数交通機関を乗り放題にするMaaS(Mobility as a Service)の導入により、スムーズな移動を促すことも重要です。

【マナー啓発・ルール化】地域住民の生活を守る

文化や習慣の違いによるトラブルを防ぐには、わかりやすい情報発信と、地域としての明確なルール設定が必要です。

4. 防犯カメラの導入やスマートゴミ箱の設置の検討

私有地への無断立ち入りや器物損壊を防ぐため、要所に防犯カメラを設置することは強い抑止力になります。

また、ゴミ箱が溢れて周囲が汚れるのを防ぐため、ゴミが一定量たまると自動で圧縮し、管理者に通知を送る「スマートゴミ箱」の導入も効果的です。収集作業の効率化にもつながります。

5. 多言語対応の強化と事前情報の徹底的な発信

マナー違反の多くは「悪意」ではなく「知らないこと」から起こります。

  • 看板やパンフレットの多言語化
  • ピクトグラム(絵文字)の活用
  • 公式サイトでの事前ルールの周知

旅行者が現地に到着する前、あるいは到着した直後に、地域のルールを正しく理解できる仕組みを構築しましょう。

6. 条例制定や罰則を伴う厳格なルールの運用

啓発だけでは解決しない悪質なケースに対しては、自治体による条例制定という強い手段も検討すべきです。

  • 指定エリアでの飲食禁止条例
  • 私有地への立ち入りに対する罰則

法律用語を使用する際は、住民や旅行者にも理解しやすい言葉で説明を加えることが大切です。自治体の強い意志を示すことで、観光地としての秩序を保つことができます。

【財源確保と高付加価値化】観光の質を高める戦略

対策を継続するためには、独自の財源を確保し、薄利多売から脱却する戦略が求められます。

7. 宿泊税や入域料の導入と地域への還元

観光客から直接負担を求める宿泊税や入域料(観光協力税)の導入は、持続可能な観光のための重要な財源となります。

集めた税収は、公衆トイレの清掃、観光案内所の運営、自然環境の保護など、観光インフラの維持管理に充てられます。負担の目的を透明化し、地域に還元されていることを明確に示すことが重要です。

8. 高単価・少人数型観光への転換

マスツーリズムによる混雑を避けるため、ターゲットを絞ったアプローチが必要です。

  • 単価の高い特別な体験を提供する
  • 宿泊施設の客室数を減らし広くする

客数を追うのではなく、一人当たりの消費額を上げることで、少ない人数でも高い経済効果を生み出すことができます。

9. 高付加価値コンテンツの造成

地域の歴史、文化、自然といった固有の魅力を深く掘り下げたコンテンツを作ります。

  • 早朝の寺院での特別な座禅体験
  • 地元食材を使った高級なガストロノミーツアー
  • 専門ガイドが同行する自然観察ツアー

他の地域では体験できない付加価値をつけることで、満足度を高め、リピーターの獲得につなげます。

【DX・テクノロジー活用】現場の負担を減らす省力化

人手不足が深刻な現場において、デジタル技術の活用は必須の対策です。

10. 混雑状況のリアルタイム可視化

AIカメラやWi-Fiの接続データを活用し、観光地や店舗の混雑状況をリアルタイムで計測します

  • スマートフォンアプリで混雑度を色分け表示
  • デジタルサイネージで空いているルートを案内

旅行者自身に空いている場所を選択させることで、自然な分散を促すことができます。

日本国内のオーバーツーリズム対策の事例

ここからは、実際に課題を乗り越え、効果を上げている国内の自治体の事例を紹介します。

京都府京都市:手ぶら観光の推進と観光バス規制による混雑緩和

世界的な観光都市である京都市では、路線バスに大きなスーツケースを持ち込む観光客が増え、市民がバスに乗れないという問題が発生しました。

そこで市は、「手ぶら観光」を推進しました。主要駅に荷物預かり所を増設し、宿泊施設まで荷物を配送するサービスを拡充することで、身軽な移動を促しました。また、観光バスの乗り入れルートや駐車場所を厳格に規制し、周辺道路の混雑緩和に向けた取組を進めています。

神奈川県鎌倉市:パーク&ライドの実施と交通分散化

鎌倉市は、休日の深刻な交通渋滞に悩まされていました。

解決策として、市中心部から離れた駐車場にマイカーを停め、そこから江ノ島電鉄や路線バスで移動する「パーク&ライド」を導入しました。協力した観光客には、交通機関の割引や協賛店舗での特典を付与することで公共交通機関への乗り換えを促進しています。

北海道美瑛町:多言語でのマナー啓発と看板・デジタルサイネージの設置

美しい丘の風景で知られる美瑛町では、写真撮影のために観光客が農地に無断で立ち入る被害が相次ぎました。

これに対し、町は多言語での注意喚起看板を各所に設置しました。さらに、デジタルサイネージも活用して、撮影ルールの周知や混雑状況の可視化を行い、マナー向上と分散を促しています。

沖縄県竹富町(西表島):利用人数制限と事前申請による自然環境保護

世界自然遺産に登録されている西表島(竹富町)は、自然環境の保全と観光の両立が課題でした。

2025年3月から「ピナイサーラの滝」など5つのフィールドを対象に、1日あたりの利用人数制限と事前申請制度を開始しています。これらの区域にトレッキングやカヌー等で立ち入るには、竹富町への事前申請や登録引率ガイドの同行などが必要です。

また、竹富島では2019年9月から任意の入域料を導入しており、協力金は環境保全活動費等に活用されています。

官民連携でオーバーツーリズム対策を進めるなら「地域創生インバウンド協議会」へ

オーバーツーリズム対策は、一企業や一自治体だけで解決できるものではありません。地域全体を巻き込んだ仕組みづくりが不可欠です。

全国74社の企業と51団体の自治体が参画するプラットフォーム

一般社団法人地域創生インバウンド協議会は、企業会員74社・自治体会員51団体(2025年11月時点)が参画する、地域創生とインバウンド振興のためのプラットフォームです。

観光課題に直面している自治体と、解決策をもつ民間企業をマッチングし、実効性のあるプロジェクトを推進しています。

知見の共有とビジネス共創で持続可能な観光を実現

当協議会では、定期的な研究会や交流会を通じて、官民の枠を超えた「知見の共有」を行っています。

他地域での成功事例や失敗事例、最新のテクノロジー活用法などを学び合うことができます。域の未来を創り、持続可能な観光ビジネスを共創したいとお考えの担当者様は、ぜひ当協議会へご相談ください。

オーバーツーリズム対策に関するよくあるご質問

対策を進める上で担当者が抱きやすい疑問についてお答えします。

Q. 予算が限られている小規模な施設でもできる対策はありますか?

予算が限られている場合でも、工夫次第ですぐに実施できる対策はたくさんあります。例えば、無料の翻訳アプリを活用した多言語接客や、手作りのPOPによるマナー啓発、SNSを用いた混雑時間帯の事前告知などは、コストをかけずに始められる有効な手段です。また、単独での申請が難しい場合でも、地域の協議会などを通じてグループで観光庁の補助事業に申し込むことで、デジタルシステムの導入などが実現できる可能性もあります。まずは身近なところから、できる工夫を探してみましょう。

Q. 住民の反対意見をまとめるにはどうすればいいですか?

住民の反対意見をまとめ、円滑な合意形成を図るためには、計画の初期段階から対話の場を設けることが不可欠です。感情的な議論を避けるため、混雑状況や苦情件数を可視化した客観的なデータを提示し、地域の課題を全員で共有することから始めてください。その上で、対策を講じることが結果的に住民の生活環境の向上につながるというメリットを丁寧に説明しましょう。一度きりの説明会で終わらせず、定期的な協議の場を設けて対話を重ねることが、信頼関係を築くための近道となります。

Q. 観光客を減らさずに混雑だけを解消することは可能でしょうか?

観光客の総数を維持したまま、混雑だけを解消することは十分に可能ですこれを実現するためには、価格変動制(ダイナミックプライシング)や事前予約制を導入して需要を平準化させたり、ICTを活用してリアルタイムの混雑情報を配信したりする手法が大きな効果を発揮します。旅行者自身が空いている時間や場所を自発的に選択できる仕組みを整えれば、地域経済への貢献度を落とすことなく、特定の時間やエリアへの集中を自然に回避できるようになるでしょう。

まとめ

オーバーツーリズム対策は、地域住民の生活を守り、観光地のブランド価値を維持するために不可欠な取り組みです。

国の対策パッケージや補助金を活用しつつ、「混雑緩和」「マナー啓発」「財源確保」「DX活用」といった具体的な手法を組み合わせることが重要です。本記事で紹介した事例も参考に、まずは現状の課題を把握し、地域が一体となって持続可能な観光地域づくりへの一歩を踏み出していきましょう。

著者情報

私たちは、企業会員74社・自治体会員51団体(2025年11月時点)が参画する、地域創生とインバウンド振興のためのプラットフォームを運営する、一般社団法人地域創生インバウンド協議会の事務局です。

定期的な研究会や交流会などの運営を通じて、官民の枠を超えた「知見の共有」と「ビジネス共創」の場を提供しています。本コラムでは、地域創生・インバウンドに関する情報を中心に、地域の未来を創るための有益な情報を発信していきます。

協議会について詳しく見る