2026.07.31
二次交通の課題を解決してインバウンドと地方創生に繋げる方法を事例を交えて解説
「地方に魅力的な観光資源があるのに、インバウンド客を取り込めていない」とお悩みではないでしょうか。
具体的には、以下のような課題を抱えている方が多いかもしれません。
・最寄り駅からのアクセスが悪く、集客できない
・二次交通を整備したくても、ドライバーが不足している
・自治体や他企業とどのように連携すればよいかわからない
インバウンド誘客と地方創生を成功させるには、二次交通のDX化と官民連携が不可欠であるということです。単独の組織だけでは予算や人材に限界があり、地域全体で共創することで持続可能な交通網を構築できるからです。
本記事では、二次交通が抱える3つの壁と解決策について詳しく解説します。
自地域の課題を解決し、新たな活力を生み出しましょう。
■この記事でわかること
- 地方観光における二次交通の現状と課題
- MaaSやAIオンデマンド交通などの解決策
- 官民連携で交通の壁を突破した成功事例
- 交通改善を地域の稼ぐ力に直結させる手順
この記事の要約はこちらをクリックしてください
地方の魅力的な観光資源を活かし、インバウンド誘客と地方創生を成功させる鍵は「二次交通」の課題解決にあります。深刻なドライバー不足や言語の壁、決済の不便さといったハードルは、単独の自治体や企業では解決が極めて困難です。これらを突破するためには、MaaSやAIオンデマンド交通といったDX化の推進と、官民一体となった強固な共創体制の構築が不可欠です。単なる移動手段の提供にとどまらず、移動のシームレス化によって観光客の滞在時間や客単価を向上させましょう。交通網の整備を「地域の稼ぐ力」へと直結させることで、初めて持続可能な地方創生が実現します。
地方創生とインバウンド誘客を左右する「二次交通」の重要性
二次交通とは?地方観光における現状と背景
二次交通とは、空港や主要な新幹線駅などの「一次交通」から、最終目的地である観光地や宿泊施設までの移動手段を指します。
日本の地方都市には、美しい自然や歴史的な建造物など、世界に誇る魅力的なコンテンツが多数存在しています。
しかし、そこへたどり着くための路線バスやタクシーが決定的に不足しているのが現状です。
少子高齢化や過疎化に伴う地域住民の利用減少により、地方の交通インフラは縮小傾向にあります。
そのため、どれほど素晴らしい観光地であっても、観光客が訪れたくてもアクセスできないという事態が発生しているのです。
インバウンド客の地方分散化と二次交通不足による機会損失
近年、訪日外国人観光客(インバウンド)の関心は、東京や大阪といった三大都市圏から地方へと移りつつあります。
日本の原風景や独自の文化を深く体験したいというニーズが高まっているためです。
観光庁のデータによれば、地方部における外国人延べ宿泊者数は長期的に増加傾向にあります。
引用:観光庁「宿泊旅行統計調査」
https://www.mlit.go.jp/kankocho/siryou/toukei/shukuhakutoukei.html
しかし、二次交通が整備されていない地域では、せっかくの訪問意欲を実際の来訪に結びつけることができません。
「駅から観光地まで歩くには遠すぎる」「バスの運行が1日に数本しかない」といった理由から、旅行の候補地から外されてしまいます。
これは地域経済にとって、取り返しのつかない大きな機会損失といえるでしょう。
インバウンド対応における二次交通の3つの壁(課題)

1. 深刻なドライバー不足と既存交通インフラの維持困難
地方の交通事業者が直面している最大の課題は、深刻なドライバー不足です。
高齢化による退職が進む一方で、新たな人材の確保が極めて難しくなっています。
さらに、2024年4月からは労働基準法の改正により、自動車運転業務の時間外労働の上限規制が適用されました(いわゆる「2024年問題」)。
現状のままでは、インフラの維持すら困難な状況です。
2. 多言語対応・情報発信の遅れによる「言語の壁」
インバウンド客にとって、地方の交通機関を利用する際の大きなハードルとなるのが「言語の壁」です。
地方の路線図や時刻表、バス停の案内板などは、いまだに日本語のみで表記されていることが多くあります。
また、運転手とのコミュニケーションが取れないことも、外国人観光客に強い不安を与えます。
多言語での情報発信が遅れている地域では、自力で移動ルートを調べる必要がある個人旅行(FIT)層を取り込むことが難しくなります。
結果として、団体ツアー客しか訪れない、限られた集客構造になってしまうのです。
3. キャッシュレス決済未対応など利便性の欠如
海外ではクレジットカードや電子マネーによる決済が広く普及しており、現金を持ち歩かない旅行者が増えています。
しかし、日本の地方交通機関では、いまだに現金(日本円)のみの対応というケースが珍しくありません。
両替の手間や、乗車のたびに細かい小銭を用意しなければならないストレスは、旅行の満足度を著しく低下させます。
とくにバスの運賃箱の前でもたついてしまうことへの心理的抵抗感は大きく、インバウンド客から敬遠される要因となります。
二次交通の課題を解決するソリューション
MaaS(Mobility as a Service)による移動のシームレス化
これらの複雑な課題を解決するための有効な手段として注目されているのが、MaaS(マース)です。
MaaSとは、鉄道、バス、タクシーなどの複数の交通手段を一つのサービスとして統合し、シームレスな移動を提供する概念を指します。
利用者はスマートフォンアプリなどを通じて、現在地から目的地までの最適なルートを簡単に手に入れることができます。
複雑な乗り換えや言語の壁を意識することなく、スムーズに移動することが可能です。
検索・予約・決済の統合がもたらすメリット
MaaSの最大の利点は、検索、予約、決済がすべて一つのプラットフォームで完結することです。
具体的には、以下のようなメリットがあります。
- スマホ一つで移動のすべての手続きが完了する
- 母国語でのルート検索やチケット予約ができる
- クレジットカードによる事前決済に対応している
- 乗り換え時の待ち時間や心理的ストレスが減る
- 地域の観光情報との連動で回遊性が向上する
これにより、インバウンド客は現金を用意する手間や、現地の言葉で道を聞く不安から完全に解放されます。
| 比較項目 | 従来の二次交通 | MaaS導入後の二次交通 |
|---|---|---|
| 情報検索 | 各社のWebサイトを個別に確認 | アプリ一つで全交通機関を一括検索 |
| 決済方法 | 乗車ごとに現金支払い | クレジットカード等で事前一括決済 |
| 言語対応 | 日本語メイン | 多言語対応(アプリの言語設定に依存) |
AIオンデマンド交通による効率的な配車とコスト最適化
決まったルートと時刻表で運行する従来の路線バスとは異なり、利用者の予約に応じてAIが最適なルートを計算して運行するのが「AIオンデマンド交通」です。
需要があるときだけ運行し、同じ方向に向かう利用者を効率的に相乗りさせるため、無駄な走行を大幅に減らすことができます。
これにより、限られたドライバーや車両を最大限に活用することが可能です。
コストを抑えつつ、利用者の利便性を維持する現実的な手法として、多くの地方自治体で導入が進んでいます。
二次交通DXを推進し、持続可能にするためのアプローチ
MaaSやAIオンデマンド交通といったデジタル・トランスフォーメーション(DX)を推進するには、地域全体での強力な連携が欠かせません。
交通事業者単独でシステムを開発・維持するのは、費用的にも技術的にも負担が大きすぎるからです。
自治体が主導して補助金を活用し、地域の観光事業者やIT企業を巻き込んだコンソーシアム(共同事業体)を形成することが重要となります。
みんなで費用と知恵を出し合うことで、初めて持続可能な運営体制を構築できるのです。
【成功事例】官民連携で二次交通の壁を突破した地域
事例1:自治体と交通事業者の連携によるMaaS導入とデータ活用
具体的な成功事例として、静岡県伊豆エリアなどでの観光型MaaSの取り組みが挙げられます。
伊豆半島は魅力的な観光地が広範囲に点在しているものの、エリア内の移動が不便であることが長年の課題でした。
そこで、複数の交通事業者と自治体、そしてシステムを提供する企業が連携し、MaaSアプリを共同開発しました。
スマートフォン一つでデジタルフリーパスの購入や観光施設の入場券の予約ができるようになり、インバウンド客の回遊性が向上したのです。
引用:国土交通省「伊豆における観光地型MaaS実証実験」
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/transport/content/001891456.pdf
事例2:観光事業者とIT企業の共創によるオンデマンド送迎網の構築
別の好例として、長野県の白馬村におけるオンデマンド交通の導入事例があります。
スキーリゾートとして世界的に有名な白馬村では、冬場のインバウンド客の急増に伴い、スキー場や宿泊施設間の移動手段が不足していました。
そこで、地元の観光局とIT企業が協力し、AIを活用したオンデマンド乗り合いタクシーの運行を開始しました。
引用:国土交通省「【実証運行】事業採択事例」
https://kotsu-kuhaku.jp/adopter_r5/kyousou/report/?case=hokushin04
利用者は専用アプリから多言語で配車をリクエストでき、完全キャッシュレス決済に対応しています。
また観光客向けだけではなく、住民も利用でき、地元住民価格が設定されていることもポイントです。
成功事例から読み解く失敗しないためのポイント(合意形成と実証実験)
これらの事例からわかる成功の秘訣は、「事前の丁寧な合意形成」と「段階的な実証実験」です。
最初から完璧なシステムを全域に導入しようとすると、莫大な初期費用と大きなリスクを伴います。
そのため、以下のような手順を踏むことが重要です。
- 地域住民や既存の交通事業者と十分に対話する
- 特定エリアや期間限定で実証実験を小さく始める
- 利用者の声を分析してシステムの課題を洗い出す
- 改善を重ねてから本格的な導入フェーズに移行する
- 関係者全員で小さな成功体験をしっかりと共有する
このプロセスを経ることで、地元の強い理解を得ながら、失敗のリスクを最小限に抑えること
二次交通改善を「地域の稼ぐ力」に直結させるステップ
移動手段の提供にとどまらない「観光体験」の設計
二次交通の整備はあくまで「手段」であり、それ自体が目的ではありません。
最終的な目標は、移動をスムーズにすることで地域の観光資源を深く体験してもらい、経済的な価値を生み出すことです。
例えば、バスや乗り合いタクシーの移動時間そのものをエンターテインメント化する工夫が考えられます。
車内で地元の特産品を味わえるようにしたり、GPSと連動した多言語の音声ガイドで地域の歴史を解説したりすることで、単なる移動が「特別な観光体験」へと昇華します。
地域経済の活性化(客単価向上・滞在時間延長)への導線作り
交通利便性が向上すれば、観光客の地域での滞在時間を確実に延ばすことができます。
滞在時間が長くなれば、飲食店での食事やお土産の購入など、地域での消費活動が自然と増加します。
そのためには、交通の予約画面上で、地域の観光施設や飲食店の割引クーポンをデジタル配信するなどの仕組みが必要です。
点と点であった観光スポットを二次交通で繋ぎ、地域全体でお金を落としてもらう「面」の導線を設計することが、地方創生の本来の目的となります。
地域創生インバウンド協議会が支援する「ビジネス共創」
ここまで解説してきたとおり、二次交通の課題解決には、官民の枠を超えた強固な連携が不可欠です。
しかし、自社や自団体だけで適切なパートナーを見つけるのは決して容易ではありません。
一般社団法人地域創生インバウンド協議会では、企業会員74社・自治体会員54団体(2026年6月時点)が参画する国内最大級のプラットフォームを運営しています。
当協議会は、単なる情報交換にとどまらず、実際の課題解決に向けた「ビジネス共創」の場を提供しています。
定期的な研究会や交流会を通じて、最新の知見を共有し、地域の未来を創るための実践的なサポートを行うのが最大の特徴です。
「自地域でもMaaSを導入したい」「実証実験に向けて連携できるパートナーを探している」という方は、ぜひ当協議会のネットワークをご活用ください。
よくあるご質問
二次交通の改善には多額の予算が必要ですか?
一から独自のシステムを開発する場合は多額の予算が必要ですが、既存のMaaSプラットフォームやパッケージ化されたAIオンデマンドシステムを活用することで、初期費用を大幅に抑えることができます。
また、国や自治体の補助金・助成金を活用することも有効な手段です。
まずは小規模な実証実験からスタートし、効果測定を行いながら段階的に予算を投下していくことをおすすめします。
交通事業者でなくても地域の交通改善に関わることはできますか?
はい、関わることができます。
むしろ、宿泊施設や観光施設などの事業者が主体となって、二次交通の改善をリードするケースが全国で増えています。
自社の顧客の送迎ニーズを地域の交通事業者と共有したり、MaaSアプリ上で自社のクーポンを提供したりすることで、交通ネットワークの価値を高める重要な役割を担うことが可能です。
官民連携を進める際、誰が音頭をとって進めるべきでしょうか?
正解は一つではありませんが、多くの場合、地域の観光戦略を統括する自治体やDMO(観光地域づくり法人)が旗振り役となるのがスムーズです。
公的な機関が音頭をとることで、既存の交通事業者や地域住民の理解を得やすくなります。
ただし、実際のシステム運用やサービス設計は、最新のデジタル技術やノウハウをもつ民間企業が主導するなど、役割分担を明確にすることが成功の鍵といえるでしょう。
まとめ:二次交通の整備から始まる持続可能な地方創生
この記事では、インバウンド誘客における二次交通の重要性と、その課題を解決するための具体的なアプローチについて解説しました。
深刻なドライバー不足や言語の壁といった課題は、MaaSやAIオンデマンド交通などのデジタル技術と、官民の強力な連携によって必ず乗り越えることができます。
二次交通の改善は、単なる移動の利便性向上にとどまらず、地域の稼ぐ力を根本から高めるための最も重要な投資の一つです。
本記事で紹介した事例やステップを参考に、ぜひ皆様の地域でも新たな交通インフラの構築に挑戦してみてはいかがでしょうか。
皆様の積極的な取り組みが、持続可能な地方創生へと繋がることを心より願っています。
